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インタビュー

EDiT手帳に刻まれる、今日の出会い、明日の出会い。
その連鎖がもたらすクリエイティブな展開とは...

「ルーム・トゥ・リード」をご存知だろうか?「子どもの教育が世界を変える」を信念に、発展途上国の識字教育と女子教育に取り組んでいる世界的な組織だ。その活動に魅せられて、異色の転身をとげた今尾礼子さん。「いまがいちばん楽しい」という彼女が愛用するのは、EDiT手帳。1日1ページを埋め尽くす、刺激的な毎日について聞いた。
PHOTO:加治枝里子 TEXT:永岡綾

やっと見つけた「やりたいこと」。
仕事選びの基準とは

今尾さんがルーム・トゥ・リードに出会ったのは、2008年のこと。当時は、大手IT企業の戦略コンサルティング部門に所属していた。時代の先端をゆく華やかな世界。しかし、心の内では、「私は自分のことしかしていない」という思いに苦しんでいたという。

「コンサルティングの仕事は、プロジェクト単位で進行します。そのため拘束時間が長く、いつも疲れ果てていました。もちろん喜びを感じる部分もありましたが、気づけば『仕事のための仕事』をしている状態に。ひとり暮らしだったこともあり、オンの日はめまぐるしく働き、オフの日はそのストレスを解消するために過ぎていく。誰の役にも立てないまま、自分のことをこなすだけ。そんな毎日をずっとつづけていくことはイメージできず、転職サイトをのぞいてみるものの、アプライしたい会社が見つからない。現状を変えたいのに、自分が何をやりたいのかもわからず……ただ焦りを募らせていました」

そんなとき知人から贈られたのが、元マイクロソフトの幹部で、ルーム・トゥ・リードの創設者であるジョン・ウッドの著書『マイクロソフトでは出会えなかった天職』だった。「読んですぐ、私も関わりたい!と思いました」という今尾さん。メールでサポーターになりたい旨を申し出ると、「あなたの得意なことを活かして。ITが専門分野なら、まず日本語のWebサイトを立ち上げるというのはどうかしら?」と返事が来た。こうして、仕事と両立しながらの活動がはじまった。

「ミーティングやイベントに参加するたび、さまざまな人に出会いました。ルーム・トゥ・リードは世界的な組織ですが、こうしなければならないという決まりや枠組みはなく、サポーターと呼ばれるボランティアの人たちがそれぞれの得意分野やリソースを持ち寄って自由に活動を展開します。それが本当に楽しくて、次第に『オーガナイズする側になりたい』と思うようになりました。自分の進むべき方向を見出せずにいた私が、やっとやりたいことを見つけられたのです」

心の底から「やりたい」と思えることを見つける。それは簡単なようで、時として、回り道が必要なこともある。今尾さんは振り返る。「かつての私は、仕事選びを『損得』で考えていたのだと思います。せっかくITの知識があるのだから、活かさなくては『損』だとか。コンサルティングのキャリアの延長線上で転職したほうが『得』だとか。でも、『好き』を仕事にしたいと思えた瞬間、そこから解き放たれました」。期せずして、ルーム・トゥ・リード・ジャパンが職員を募集することに。もう、今尾さんに迷いはなかった。

あえて「いま」にこだわらず、
出会いを信じて思いを育てる

こうして、2011年、ルーム・トゥ・リード・ジャパン2人目の職員としての日々がスタート。いま、今尾さんが最もうれしいと感じる瞬間は、「人と人との出会いが、新たなストーリーを生み出すとき」だという。

「例えば、カフェで英会話を学ぶというコミュニティを主催している男性がいました。一方で、英語のコーチングを専門とする非常にプロフェッショナルな男性がいました。どちらも個別にルーム・トゥ・リードのサポートをしてくださっている方。それぞれにお話を聞くうち、『この2人がつながれば、何かおもしろいことが起きるのでは!?』とひらめきました。出会いの場を設けると、案の定大盛り上がり。そのおふたりのあいだであっという間に『スマートフォンで英語を勉強しよう』というチャリティ・ワークショップが誕生したのです」

人と人をマッチングして知識や経験を融合させることで、これまでにないアイデアが生まれる。それはまさに、今尾さんがルーム・トゥ・リードのサポーター時代に体験してきたことだった。「私自身がそうやってもらうことで、たくさんの刺激をもらいました。今度はそれを誰かのためにやりたい」と話す。そして、人と人とのつながりが広がるほど、ルーム・トゥ・リードの活動もまた深まっていく。

さまざまな出会いを見守りつづける中で、時間のとらえ方が変わったという今尾さん。「キャッチした情報をすべて自分でどうにかしなくてはいけないと思うと、忙しいときはどうしてもアンテナを伏せ、閉じた状態になってしまいます。でも、『いつか誰かにつなげられたらいいな』という気持ちでいると、自然とアンテナが立ち、開かれた状態でいられます」。あらゆる情報がリアルタイムに飛び交い、たくさんの人々の思いが交錯する現代にあって、あえて「いま」にこだわらず、「いつか花開くこともある」とゆったり構える。そんな「思いを育てる」ことの大切さも学んだという。

1日の痕跡を残したい。
それが明日の自分の自信になる

今尾さんの365日は、単調ではない。ルーム・トゥ・リードでは、パートナー企業との交渉から、ファンド・レイジング・パーティーの準備、イベントの運営、そして事務作業まで、ボランティア・サポーターの力を借りながら、あらゆることをたった2人の職員で行わなければならないのだ。

スケジュール管理は、デジタルと手帳の2本立て。アポイントメントはPCやスマートフォンのカレンダーに入れておき、週の頭や1日のはじまりに手帳に書いて整理する。愛用しているのは、EDiTの1日1ページタイプ。毎日決まった時間に仕事をするわけではないので、そのときどきの状況を見極めながらスケジュールを組み立てます。それだけに、手帳に書き出す作業が必要なのです」という。

週のはじめには、1週間のTO DOをリストアップ。よって、月曜日のページは何度も見返すことになる。さらに、毎朝、24時間対応の時間軸を使って1日の時間割を書き込む。ユニークなのは、その横に、色ペンで実際の時間割を書き足すこと。ほかにも、月間目標が書き込まれていたり、電話会議のメモがあったり、自分への告白があったり、1日1ページのスペースをフル活用している。「告白ページは、人には見せられません(笑)」と今尾さん。「書くことが好きだから、勢いづくとついついペンが走っちゃって」と笑う。

「以前の仕事では、デジタルツールだけでスケジュールを管理していました。その日の予定をつぶしていくのが精いっぱいで、『今日はこれだけしかできなかった』と常に追われる立場でした。手帳に書くようになってからは、『今日、これだけのことができた』という達成感を味わえるように。全部予定通りにいかなくても、自分のしたことの『痕跡』が残る。それがちいさな自信になって、だんだん時間を上手に使えるようになれた気がします。とはいえ、『今日はもういいや』と書くのをサボる日もありますけど(笑)」

「むずかしいこともあるし、大変なこともある。それでも、いまはルーム・トゥ・リードでの仕事が楽しい」と話す今尾さん。時間ができると、スリランカやカンボジアの支援国へと足を運ぶ。手帳にびっしりと書き込まれた1日1日の積み重ねが、そして出会いの連鎖が生み出した活動の成果が、その伸びやかな笑顔につながっている。

ルーム・トゥ・リードの活動についてはコチラ

Profile

今尾礼子 Reiko Imao
特定非営利活動法人  ルーム・トゥ・リード・ジャパン職員

早稲田大学卒業後、日本IBM入社。金融サービス事業、ソフトウェア事業を経て、戦略コンサルティング部門にてグローバルビジネスの戦略策定等を担う。2008年からルーム・トゥ・リードのボランティア・サポーターとして、日本語サイトの構築、チャリティ・イベントの企画・運営等を行う。2011年に2人目の職員となり、企業パートナーシップ構築や広報、イベントなど幅広く取り組んでいる。
<ルーム・トゥ・リード>