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#01 クリエイターインタビュー寝る前の漫画と“お茶を淹れる”ルーティンで気持ちを「ON・OFF」。イラストレーター・unpisさんインタビュー

寝る前の漫画と“お茶を淹れる”ルーティンで気持ちを「ON・OFF」。イラストレーター・unpisさんインタビュー

マークスで毎年人気を集める、クリエイターとのコラボデザイン手帳。それぞれのクリエイターが生み出す個性豊かな作品を、いつも手元で感じることのできるアイテムです。そんな日常に彩りを添えてくれる素敵なクリエイティブはどのように生まれたのか、気になるところですよね?

そこでマークスでは、クリエイターの方々に作品制作の裏側や時間術・手帳術にまつわるお話をお聞きする“クリエイターインタビュー”をシリーズでお届け。第1回は、マークス・ダイアリー2023年のコラボクリエイターであるイラストレーター・unpis(ウンピス)さんです。

遊び心に富んだユニークな視点で描かれた魅力的なイラストを手がけるunpisさんに、作品のことから日頃の時間の使い方までをインタビュー。さらに、unpisさんならではの手帳の活用方法もお伺いしました。これを読めば、毎日の手帳ライフがもっと楽しくなるはずです。

「身の回りにあるものや現象の面白さ」を伝える、unpisさんの作品の魅力

パーソナルワーク「MY FACES」
パーソナルワーク「MY FACES」

パッケージや書籍のカバーデザインなど、さまざまなクライアントワークを手がけるunpisさん。伸びやかな線と鮮やかな色彩が印象的で「どこかで見たことがある」という人も多いでしょう。ガラスのコップや布、鏡に映る自分の姿など、いつも目にする物事を、唯一無二のアートとして表現し、ありきたりな日常を豊かに面白く感じさせてくれます。

パーソナルワーク(立体)「Candle」
パーソナルワーク(立体)「Candle」
クライアントワーク unpis×sato
クライアントワーク unpis×sato
クライアントワーク YOU IN
クライアントワーク YOU IN

テーマに対して「ちょっとひねった視点で描くことを意識している」と笑顔で話してくれたunpisさんは、年に数回開催される個展やグループ展では、自由な発想で「身の回りにあるものや現象の面白さ」をテーマに描いているとのこと。難しいことを柔らかく捉え、普段見逃しがちな物にあえて着目した作品たちは、とてもユニークで魅力的です。

そんなunpisさんとコラボレーションした2023年版ストレージイットのデザインは、3種類。どれも「unpisさんの目になって、日常を見つめてみたい」と思わせてくれる世界観に惹き込まれます。

3つのイラストが映し出す「その瞬間」の面白さと、細部までのこだわりを詰め込んだ手帳デザインに

3つのイラストが映し出す「その瞬間」の面白さと、細部までのこだわりを詰め込んだ手帳デザインに

――今回コラボした手帳は3種類ですね。3つのイラストは、それぞれどのようなイメージで描かれたのでしょうか?

unpisさん:人物を描いたもの2点と、モノを描いたもの1点を選びました。制作はデジタルでもアナログでも行いますが、今回の3つはすべてアナログで描いたものです。

VANISHING

青い背景のイラストは「VANISHING」というタイトル。英語で「消える」を意味するのですが、イラストの右側からマジシャンのステッキが出てきて、女性の頭が半分消えかかっている瞬間を描きました。

POUR

黄色いテーブルのイラストは「注ぐ」を意味する「POUR」という作品で、ガラスの反射とか、水の中の歪みを表現しています。

コピー&ペースト

赤い服を着た人物が連なっているイラストは「コピー&ペースト」というタイトルのもの。グループ展で展示した作品なのですが、「デジタルの表現をアナログで描く」という試みで作っています。デジタルなら一瞬でコピーできますが、アナログだとそう簡単にはできません。そこをあえてアナログで表現することで、面白さが生み出せたらなと。

普段、線を描くときはポスカを使うのですが、この作品は絵の具で描いたほうが理想とするラインが引けたので筆を使って描きました。手帳の表紙をよく見てもらうと絵の具ならではのムラがあって、画材の質感を感じられると思います。

――どれも「瞬間」を切り取ったイラストでステキです。表紙のロゴやスライドジッパーの色味もunpisさんが選んだそうですね。

unpisさん:そうですね。今回選んだ3作品は、赤、青、黄色とそれぞれ異なるカラーがベースになっていることも意識しました。表紙のロゴやスライドジッパーの色味も絵に合わせて選んでいます。

006_コマヨリ

例えば、黄色がベースの「POUR」では、ストレージイットのロゴは作品にあわせた「水」をイメージして透明感のある水色のインクを選びました。また、青ベースの「VANISHING」のロゴは、マジシャンの顔と近い色味のインクを何パターンか案を出してもらって選んでいます。赤ベースの「コピー&ペースト」のスライドジッパーもスライド全体を赤にしてもらうなど、絵とのバランスを見て決めました。ポケットの中に物を入れた時の雰囲気も楽しんでもらえたら嬉しいです。

お茶を淹れる時間が現実に引き戻してくれる。「ON・OFF」を切り替える日々のルーティン

――日々創作活動をするなかで、ご自身で大切にされている時間の使い方などはありますか?

unpisさん:仕事を始める前や、休憩時間にはお気に入りのお茶を淹れます。さまざまな種類のお茶をストックしておいて、その時の気分に合わせて選ぶようにしています。

また、夜に作業をすることも多いので、ノンカフェインのハーブティーも愛飲しています。スッキリしたい時はレモン系のハーブ、ちょっとおしゃれな気分に浸りたいときはカモミールとか(笑)。お茶を淹れる時間は、私にとっての「休憩」と「頭の切り替え」の時間です。座りっぱなしの仕事なので、意識的に体を動かすためにもマグカップが空になったら席を立ち、お茶を淹れ直すようにしています。

お湯を沸かすときは、頂き物のホーロー製のポットを使っています。沸いた時の音とか合図がないので、沸騰するまでコンロのそばでじっと待機。創作活動をしていると、「人間らしい生活」から遠ざかってしまうことも多くて(笑)。仕事から離れてポットのそばでお湯が沸くまで立っていると現実に引き戻される感じです。

マグカップでよく使っているのは、DAISAK(ダイサク)さんという陶芸家の、ゆる〜いクマのイラストが描かれたカップ。「今日はどれにしようかな」とカップを選ぶ時間も良い息抜きになっています。

unpisさんの紅茶ストックの中には、自身が手がけた「YOU IN」の紅茶も
unpisさんの紅茶ストックの中には、自身が手がけた「YOU IN」の紅茶も

――たくさんの種類を揃えておけば、「今の気分」にぴったりのお茶を選ぶ楽しさがありますね。その他に、心地よく時間を過ごすために、1日の中でルーティンにしていることはありますか?

unpisさん:きっちりとしたルーティンはないのですが、夜、寝る前にマンガを読むことが多いです。私は夜型人間で、制作時間の中心は夕方から夜。仕事モードのまま眠りたくないので、ベッドに入ってからマンガを1冊読んで、頭をOFFにしています。

電子書籍も読むというunpisさん。最近では、目への負担を考慮して「Kindle Paper」を使っているそう
電子書籍も読むというunpisさん。最近では、目への負担を考慮して「Kindle Paper」を使っているそう

お気に入りの『よつばと!』は、日常をテーマにした心温まる作品で、繰り返し読んでいます。単行本になる際、作者の方の加筆修正が多く入るらしく、新刊が出るまで2〜3年かかることがほとんど。長いスパンで連載をしている作品なので、主人公のよつばちゃんの成長を一緒に見守っている感じになっています(笑)。久しぶりに出た15巻の中に、うるうるっと涙ぐんでしまうシーンもあって。すごい読書体験をしたなと感じました。

その日印象に残った食べ物や景色を記録する。unpisさんオススメの手帳術

――今回コラボした手帳「ストレージイット」を実際に使っていただきました。いかがでしたか?

unpisさん:普段、仕事やプライベートの予定管理は、Googleカレンダーを使用しているので、「日常のメモ」として使ってみました。私、「誰かとどこに出かけた」とか、「何を食べた」とか、過去の出来事をよく忘れてしまうんです。友人と「この間、これ食べたよね」と言われても「そうだっけ?」みたいな(笑)。イラスト付きで残しておけば、覚えておけるし、楽しいかなと思ってこのような使い方をしてみました。

カレンダーページには、「その日食べたもの」や「見たもの」をイラストと一言コメントで記録してみました。よく見ると、1日分のスペースが薄い線で上下に分かれているので、上にイラスト、下にコメントを書くとちょうどいいです。

描ききれなかったものは、カレンダーの次のページがメモになっているので、ここに記しておくことも。あと、たまに電車の中でふとスケッチをするんですが、その時もこのページが便利でした。その日記憶に残ったものを絵や文字で残すことで、「この時、ここに行ったな」と思い出を振り返れるので良いかなと思います。

ポケット部分には、出かけた時に拾った石や木の実を入れました。プロペラのような植物は、公園の丘でゴロンとくつろいでいた時に、どこからかくるくると回りながら飛んできたもの。最初は「虫かな?」と思って見ていたら、植物の実のようで。面白いな〜と思って手帳の表紙に入れて持ち帰ってきました。

川辺などで石を拾ってコレクションしている友人がいるのですが、その子と一緒にでかけるうちに、私も石を拾うことが多くなりました。一つひとつに質感や色の個性があって、よく見ると面白いんですよ。

――ちょっとしたイラストや一言コメントの記録は、日記帳ほど肩肘張らずに日々を記録できて良いですね。ステキな使い方のご提案、ありがとうございました!

profile

unpis(ウンピス)

武蔵野美術大学卒業後、都内のデザイン事務所と岐阜県のメーカー勤務を経て2020年よりイラストレーターとして独立。その後は、書籍のカバーイラストや雑貨、パッケージデザインなど、さまざまなクライアントワークに取り組む。

Instagram:https://www.instagram.com/wa_unpis/