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#02 クリエイターインタビュー長野の冬には欠かせない薪ストーブの準備から1日が始まる。アーティスト・松本セイジさんインタビュー

長野の冬には欠かせない薪ストーブの準備から1日が始まる。アーティスト・松本セイジさんインタビュー

クリエイターの方々に作品制作の裏側や時間術・手帳術にまつわるお話をお聞きする“クリエイターインタビュー”シリーズ。第2回目は、「ねずみのANDY」や「DOG & DUCK」でお馴染みの松本セイジさんです。愛らしいキャラクター達を身近に感じることができる、松本さんとマークスのコラボ商品。手帳をはじめ、ポーチやステッカー、マスキングテープなど、日常で活躍してくれるアイテムがたくさんラインアップしています。

今回は、松本さんが描くキャラクターが生まれた背景や、長野での暮らし、時間の使い方について伺いました。さらに松本さんの手帳の使い方もご紹介。アーティストの日常や作品の背景を知ることで、「ANDY」や「DOG & DUCK」などのキャラクターの魅力が、ますます膨らんでいきそうです。

「身近にある幸せと豊かさ」を感じさせてくれる、松本セイジさんの作品の魅力

「ANDY SLIDE」
「ANDY SLIDE」

「いつもチーズとともにありたい」という気持ちが、絵からあふれ出ている「ねずみのANDY」。アウトドアが大好きな白い犬とアヒルのキャラクター「DOG & DUCK」。

視線が合いそうで合わない、まんまるの目。「どこを見ているの?」「何を考えているの?」と問いかけたくなる表情も魅力的で、絵の中のストーリーを想像させてくれます。松本さんが描くキャラクターは、いずれも「自分の好き」に正直で、毎日を大切に過ごしている印象。絵の中で各々の「日常」を過ごすキャラクターたちからは、身近にある幸せや、豊かさへのヒントを得ることができます。

「ANDY trashcan」
「ANDY trashcan」
「EVERYDAY」
「EVERYDAY」

「たくさんの人に、アートを手にしてもらいたい」という思いから、雑貨も多く手がける松本さん。ANDYたちが描かれた手帳や雑貨がそばにあれば、慌ただしい日常の中でも、自由やくつろぎを感じられるはずです。

展覧会「SEIJI MATSUMOTO EXHIBITION『Fun!』」
展覧会「SEIJI MATSUMOTO EXHIBITION『Fun!』」
展覧会「SEIJI MATSUMOTO EXHIBITION『Fun!』」
展覧会「SEIJI MATSUMOTO EXHIBITION『Fun!』」
展覧会「SEIJI MATSUMOTO EXHIBITION『Fun!』」
展覧会「SEIJI MATSUMOTO EXHIBITION『Fun!』」

「アートは観にいくもの」だけに留めない。手に取れる存在として雑貨への展開にも注力

「アートは観にいくもの」だけに留めない。手に取れる存在として雑貨への展開にも注力

―― 松本さんは雑貨制作にも力を入れている印象ですが、どのような思いからなのでしょうか?

松本セイジさん(以下、松本さん):「アートは美術館やギャラリーに観に行くもの」という認識でいる人や、実際に足を運ぶとなると「敷居が高いな」と感じる人は少なくないと思うんです。僕は今でもギャラリーに行くたび、緊張してしまいます(笑)。

雑貨への展開に力を入れているのは、「難しいことは考えずに、もっと気軽に作品に触れてもらいたい」という思いから。作品を買うのは難しくても、グッズなら気軽に手に取れると思います。僕自身、子どもの頃に行った場所、見たものの思い出として、よくグッズを買っていました。その日見たこと、感じたことを思い出すきっかけになるのではと考え、グッズへの展開も多く手がけています。

今年開催した大阪・心斎橋での個展では、マークスさんとのコラボで作った雑貨も多く置かせてもらいました。雑貨を通して、作品を身近に感じてもらえれば嬉しいです。

「見たこと」や「感じたこと」を絵で表現。ANDYとDOG & DUCKが生まれた背景

手帳に使用されているANDYイラスト

―― ANDYはニューヨークで着想を得たそうですね。今回の手帳や雑貨に描かれているキャラクターが生まれた背景について教えてください。

松本さん:会社員として勤める中で、「クライアントワークだけではなく自分の作品も作りたい」と考えるようになり、「アートといえばニューヨーク!」というテンションで渡航しました。現地では至る所にアートが飾ってあって「文化として浸透している」という印象。とはいえ、何の当てもない状態だったので、カフェの壁に押しピンの跡を発見するたび、「展示させてほしい」という交渉を繰り返していました。

その結果、グランドセントラル駅のカフェで個展を開催できることになったのですが、今度は「何を描くべきか」に悩まされて……。そんな時、地下鉄の薄暗い線路脇を走るネズミの姿を目にしたんです。「当てもなくひた走る姿」を当時の自分と重ね合わせ、モチーフにしようと決めました。そうして生まれたのがANDYです。

手帳に使用されているDOG&DUCKイラスト

―― 白い犬とアヒルがモチーフのDOG & DUCKは、いつ頃生まれたキャラクターなのでしょうか?

松本さん:DOG & DUCKシリーズは、今から1年ちょっと前に長野で生まれたキャラクターです。NYから帰国した後も、東京、福島など、拠点を転々としていましたが、長野で個展を開いたとき、自然の豊かさに「なんて素敵な場所だろう」と感動してしまって。2020年頃、長野に土地を購入し、移住しました。

僕の作品は、住んだ場所にすごく影響を受けるんです。水鳥が多く飛来してくる湖の近くに移住したこともあり、「この日常や心境を表現したい」と考えたときに生まれたのが、DOG & DUCK。水鳥たちを僕なりに解釈して「白いアヒル」としてキャラクターを作りました。犬は僕の愛犬がモデルになっています。

アトリエにて。キャラクターのモデルになっている愛犬と一緒に
アトリエにて。キャラクターのモデルになっている愛犬と一緒に

―― ANDYはチーズ、DOG & DUCKは焚き火や丸太などアウトドアモチーフとの組み合わせが多いですね。

松本さん:「日常の中にある幸せ」が1つのテーマです。幸せの形って人それぞれだと思うのですが、ANDYの場合は「チーズ」なんです。チーズさえあれば遊べるし、幸せでいられる。「本当はたくさんの幸せがあるんだよ」というメッセージを伝えたいという思いで描いています。

僕自身、もともとキャンプやアウトドアが好きです。自宅には薪ストーブもあるので、DOG & DUCKの彼らは丸太を運んでいたり、自然の中にいたりすることが多いですね。

日の出とともに起き、薪ストーブの準備から1日が始まる

庭の木を切って乾燥させ、薪として使うこともあるそう
庭の木を切って乾燥させ、薪として使うこともあるそう

―― 創作活動をする中で、ルーティンにしていることを教えてください。

松本さん:朝の薪ストーブの準備がルーティンになっています。長野の冬は、とにかく寒いんです。朝起きたら薪を保管場所まで取りに行って、その日の気温によってすぐ火をつけることもあれば、夕方につけることもあります。仕事中も薪をくべ続けないと、火が消えてしまうので、定期的に席を立ちます。創作中は、あまり体を動かさないので、薪ストーブの管理で体を動かさないと(笑)。

キャンプでも焚き火をしますが、火を見つめていると心が無になれて落ち着くんです。薪の確保も管理もすごく大変ですが、あってよかったなと思います。夜、仕事を終えてから、ストーブの前でぼんやりとしながらビールを飲むことも多いです。火を見る時間が、日常の「余白」になってくれているように思います。

庭や畑もあるので草刈りも大切な家仕事の1つ。土に触れながら、体を動かすことも良いリフレッシュになっています。

朝の庭の景色。畑では多くの種類の野菜を栽培している
朝の庭の景色。畑では多くの種類の野菜を栽培している

―― お庭の手入れや畑仕事は、良い気分転換になりそうですね。長野に移住してから、暮らしや時間の使い方にどのような変化がありましたか?

松本さん:東京に住んでいた頃は、マンション暮らしだったこともあり、公園くらいしか「土」と触れられるところがないなと感じていました。長野に来たら、逆に「土しかない!」という感じ(笑)。まるで代々木公園を独り占めしているくらいの感覚ですね。

時間の使い方も大きく変わりました。今は、日の出とともに目を覚まし、夜中には作業しないようにしています。体調管理を意識するようになったからかもしれません。会社員時代は終電で帰ったり、徹夜をすることも多くて。すごい速さで消費するし、自分の制作も消費されている感覚でした。

長野に来てからは、友人宅でご飯を食べることはありますが、夜どこかに出かけたりすることはしなくなりました。飲みに行きたくても、そもそも夜遅くまで営業しているお店がないですし、車で移動しなければ行けない距離感ですしね(笑)。

ポケットには名刺がわりのステッカーをIN。松本さんの手帳の使い方

ポケットには名刺がわりのステッカーをIN。松本さんの手帳の使い方 ポケットには名刺がわりのステッカーをIN。松本さんの手帳の使い方

―― 今回コラボした手帳を実際に使っていただきました。いかがでしたか?

松本さん:普段は仕事の案件をTO DOリストに書き出して管理しています。今回、手帳を使ってみようと開いたものの、実は12月にほとんど予定を入れていなくて(笑)。 11月中旬から12月初旬まで大阪で個展を開催していたので、年末まではインプットの時間も大切にしたいと思い。

ポケットには名刺がわりのステッカーをIN。松本さんの手帳の使い方

ポケットには、ステッカーを入れました。普段、名刺がわりに配れるよう、ステッカーを持ち歩いているので、パッと取り出せるところにあると便利ですよね。

―― 自身の経験を絵にすることが多いと話してくれた松本さん。今後、どのようなシーンが作品に描かれていくのか楽しみです。素敵なお話をありがとうございました!

profile
松本セイジ

松本セイジ

1986年、大阪生まれ。芸大卒業後、デザイナーとしてのキャリアを積み、ニューヨークへ。2017年に初の個展「ねずみのANDY」を開催。その後、東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、ソウルなどの都市で個展やアートイベントに参加。New Balance、NIKE、UNIQLO、The New York Timesなど国内外のさまざまなプロジェクトに携わる。現在は長野県の山麓にアトリエを構えて活動している。

WEB:https://seijimatsumoto.com/
Instagram:https://www.instagram.com/seijimatsumoto_arts/