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YokkePokkeヨッケ ポッケ

カワイイは「次元」を超える。
昔ながらの民芸を“現代”文様に。

外国人観光客を「インバウンド」と呼び始めたころから、日本のものづくりは、これまでとは違う方向を向き始めた。「〇〇人が爆買い」「〇〇人がよろこぶ日本のおみやげ」そんなキャッチコピーが先行し、日本の女性客を狙っていた「和テイスト」が「日本の伝統文化」とパッケージを変え、陳列されるようになった。

その一方で、現代の数寄者・みうらじゅん氏が提唱する「いやげもの」を愛でる、“カウンター勢”も、少なからず存在する。“一周回って(おもしろい)”というアレだ。かと言って、Louis Vuittonのモノグラム・バッグに、さるぼぼが揺れている光景は、想像し難いだけでなく、“一周回って(おしゃれ)”とも、形容し難い。

経済性に揺れる、「日本らしさ」。現代アートに接近するほどの時代性と緊張感を孕んだ「工芸作品」が出現する一方で、日本の日常を彩るはずの民芸品が迷走する、二極化。

軽やかな感性で「日本らしさ」を昇華させるものづくりが登場した。Yokke Pokkeを主宰する磯野藍氏は、日本の昔ながらの民芸品や郷土玩具をモチーフに、新たなものづくりに挑戦している。「以前から集めていた『木彫りの熊』を見て、なにかできないかな?と思ったのが始まりです」と磯野氏。「かわいらしい小さいサイズの『木彫りの熊』を見て、『柄にしたらおもしろいかも』と」。もとより興味のあった、日本各地の民芸品や郷土玩具は「改めて見ると、鮮やかな原色系が多い」ことに気づき、(ほぼ)黒一色の木彫りの熊を、カラフルに彩色し布地に「柄」として落とし込んだところ、「そのギャップがおもしろいと反応がよく、『何の柄?』と若い世代にも手に取ってもらうきっかけになるとわかって」Yokke Pokkeのものづくりが始まった。いわゆる民芸品は「“そのまま”過ぎて、実際に身に着けたりするのが難しい」と感じていた磯野氏。「日本に昔からある身近なモノを、違う方法で表現することで、世の中にないモノを提案できる」。

立体の木彫りの熊をパターン化し、平面という二次元に落とし込んだ磯野氏。その感受性がキャッチしたさまざまな民芸品や郷土玩具が、作品になる。「気を付けているのは、モチーフに目を入れないこと。」と磯野氏。「目が存在するだけで、柄がキャラクター化します。柄として“潜ませる”ために、あえて目を入れません」。磯野氏は「日本らしさ」を、「次元」を問うことなく、現代に合った「文様」として再構築しているのだ。さらには、かつて文様化した「張子の虎」を、磯野氏は「自分の郷土玩具をつくってみたい」と、再び「三次元」に立ち上げた。

「スーパーフラット」。1990年代~2000年代における、日本の現代アートを特徴づける概念として、最も認知されたものであることに異論はないだろう。二次元の美少女が、フィギュアとして三次元に立ち上がってもなお「スーパーフラット」と称される、超平面性。磯野氏の作品は、現代の文様として次元を行き来し、「日本らしさ」を表現している。

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