私は、そういう細かいものがたくさんある風景が大好きで。そんな植物の色やサイズのバランスを整えて寄せ集めると、普通の花束とは違ったパワーが出るというか、脇役もすべて主役になりうるんだなとわかるというか……。こんなふうにわかりやすい花ばかりじゃない花屋があってもいいなと思います。最近は、だんだんそれがお客さまにも浸透してきたようで、マニアックなオーダーが増えてきましたね(笑)。
1日1ページタイプを半分に折って、メモを添える
私はEDiTの1日1ページタイプの1ページをちょうど半分ぐらいのところで折って、折り目の左は時間軸に沿ったスケジュールを、右には花生けやワークショップの際に用意するものなどのメモを書いています。
もちろん定規を使って線を引っ張ってもいいのですが、もし、時間がなくて定規を使えなかったり、その場に定規がなかったときに、きれいに引こうと思うあまり、先延ばしにしたり面倒になって書くのをなんとなくやめてしまわないように、折り目を仕切り線代わりにしています。ちょっとしたことで継続が途切れてしまうということは、意外によくあるので……。
余白には、生けこみをするお店の雰囲気にしっくり来るような花の色を色鉛筆で書きこみます。市場で花を仕入れるときに、この色を参考にして買うんですよ。
その空間に対して花をつくり込みすぎるのは好きではないので、無理のない感じを目指して花を生けます。存在感はあるけれど、違和感をつくらないような自然な馴染みかたを意識していますね。
お気に入りの蛍光ペンでわかりやすく
マンスリーページは、蛍光ペンで3色に分けています。お店とワークショップ、生けこみなど予定が入り乱れているので、その日が大まかに何をすべき日なのかを色付けしておくと、ひと目でわかります。
グリーンはお店を開ける日、イエローは生けこみに行くお店の名前、ピンクはワークショップやポップアップショップの予定とルールを決めています。
一番左のメモ欄にはその週の仕入れや仕事で気付いたことをメモしています。また、気候から季節を感じたり、市場に入る花の移り変わりから気付いたことを端的に書き留めています。
見た人が季節の訪れを感じるためのヒントを書きこむ
料理屋さんもそうなのですが、花屋はお客さまよりも少しだけ早く季節を変えてしつらえるのが腕の見せどころです。
8月のページを見ると、8月の第1週目はまだまだ夏のギラギラとした陽が差していたので、「ギラギラに負けないタフさ」とメモをしています。生ける花も、生命力を感じるものや葉っぱがすっとまっすぐに立つわかりやすい植物などをイメージ。お盆前後の雨が降ったあとからはもう秋の気配を感じたので、このあたりから花もオレンジ系や起毛のふさふさした葉ものを仕入れるようになりました。
振り返りに価値があるメモをつける
花の種類の右に書いてある記号は、市場でこのお花が活き活きしていて目立ってるな、気になるなと感じたものに「↑」、もう旬が終わってしまいそうだと思った花に「↓」と書き留めて、振り返ったときにそのときの記憶が花開くような端的なメモにしています。
不思議なことに、暦などで知られる「二十四節気」のような細かい季節の移り変わりは、このメモを追っていくとぴったりハマるなあと思うことがしばしばありますね。
来年の自分がメモを見て、何かを「発見する」
例えば春の中にもいろいろあって、自転車を漕いでいるときの風に「なんとなく空気が変わったかも」と思って調べてみると、地面がガチガチになっていた冬から、ちょうど虫が土からもぞもぞ這い出してくるという意味の「啓蟄(けいちつ)」の頃に変わっていたりして。昔の人は植物の変化に敏感だったんだなとしみじみ感心します。
そんな気持ちをメモしていくことで、例えば来年の同じ時期にワークショップをやるときに見返せば、打ち合わせのときなどに提案しやすくなります。あのときはこういうふうに季節を感じていたんだということが客観的に振り返ることができると、流れる日々を通り過ぎてしまうことなく、蓄積していくようなものにできるんだな、と思います。
手帳って、赤裸々に書きすぎると恥ずかしくて、あとからまた読もうと思えないですよね(笑)。でも、同じ道を行き来して、こんなふうに移ろいを感じただけでも素敵な記憶の蓄積になります。あとから見て自分がなにか発見したり、楽しめるものをひとつメモしつづけることは、どんな人にもできる、手帳を続けるためのヒントかもしれませんね。